アルトと暮らす

アジソン病と診断されたアルト(ボーダーコリー♂)との生活日記

アジソン病と診断されたお話

今朝、アルトは退院許可がでて、約1週間ぶりにうちに帰ってきました。アジソン病と診断を受けてからまだ日も浅く、親としてもまだ気持ちの整理がつかないところで、どこから何を書いていけばいいのかわかりません。少し長くなるかもしれませんが、まずは事の発端を書いておきたいと思います。

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異変

1週間前の11月5日(日)でした。いつもの週末のとおり、午前中にドッグランで2時間ほど元気いっぱいに走り回って、これもいつも通り落ち着いた頃に朝ごはんをあげると、匂いはかぐものの口をつけようとしません。主食のドライフード(ブリスミックス)をあげるようになって半年以上経ちますが、多少食いつきが悪くても、レンジで温めたりすればほぼ完食していました。あるいは味に飽きていたとしても、翌日には何事もなかったかのように食べたり。この日は結局一口も食べませんでした。

翌日も同じように口をつけません。夜になって、かつおぶしをトッピングしてあげると、それだけ食べるといった塩梅でした。バナナやミカンも食べました。やわらかいものなら食べるのかな?といった感覚でしたが、おやつの煮干しをあげるといつも通りの食いつき方だったので、ただのわがままの可能性もありそうだと、この日は病院へは行かず様子を見る事にしました(飽きて食べなくなったことが以前にありましたので)。

でも、夜ご飯を完食したらあげることにしている、大好きな歯磨きガムをあげてみて、この判断は一変しました。食いつくものの食べない。食べてもほんの一口だけ。いつもなら20秒もあれば完食するはずがこれはおかしい。夜半になると水もほとんど飲まなくなり、翌朝になって主治医のいる動物病院へ直行したのでした。

入院

血液検査の結果、かなりの脱水症状が認められたため、すぐに入院の措置が取られました。体温も平熱が39.4 ℃のところ、38.4 ℃で、体重も2週間ほど前と比べていきなり1 kg以上低下していました。

なかでも主治医の目を引いたのは、血中のカルシウムの値でした。基準値(9.3 - 12.1 mg/dl)を超えるどころか、測定可能値である16.0 mg/dlを超えてしまっていました。主治医によれば、考えられる原因(病気)は以下のようなものです(覚えているもののみ記載)。

  1. 腫瘍
  2. 上皮小体機能亢進症
  3. 副腎皮質機能低下症
  4. アジソン病
  5. 血液濃縮(脱水)
  6. ビタミンD過剰摂取
  7. 骨が溶けるなんらかの病変
  8. 腫瘍の骨への転移

脱水は明らかに陽性であるものの、これらの可能性を一つずつ排除するための検査を行い、原因を特定していくという方針になりました。それまでは対症療法として、皮下点滴および抗生剤投与(cCRP値も基準値より高く、炎症が起きていることも示唆されたため)で状態を改善していくことになりました。

もっともハッピーな結果は、脱水症状が治れば全て基準値内におさまるというもの。ワーストはもちろん癌です。それも骨に転移しているとなればターミナルですから、それこそ23日の誕生日を迎えられるかどうか、というレベルのお話になってしまいます。年齢や触診等からの所見では、可能性としては低そうと言われたものの、しばらくは不安な日々を過ごすことになりました。

検査結果

総合的な検査の結果を聞いたのが入院から4日目になる10日(金)でした。血中のコルチゾールという成分の値が基準値(1.0 - 7.8 μg/dl)の下限はおろか、測定可能値である最下限の0.2 μg/dlを下回るという内容でした(pre/postとも)。これが決定打となり、アジソン病と診断され、翌日からフロリネフの投与による根本治療を始めることになりました。投与の結果次第で退院できますと。

それで、実際に退院したのが今日ということになります。毎日の検査でアルトも辛かっただろうと思いますがよくがんばってくれました(入院中はおとなしく、面会のときは大興奮大喜びで帰ると少し寂しそうにするものの、分離不安もなくいい子でいてくれたとのこと)。

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退院する際に検査結果値の主要な部分の変遷をまとめていただきました。11/11からフロリネフを投与し、翌日には少し炎症が残っているものの(cCRP > 0.7)ほぼ全ての値が正常値に収まっています。まさしく卓効を示したといえそうです。

アジソン病って?

私は、アルトがそうと診断されるまで、アジソン病という言葉は聞いたこともありませんでした。ネットで検索すれば詳しい話はいくらでもでてきますが、私なりの理解ではこういうことです。

  • なんらかの原因で副腎から分泌するホルモンが低下することで体内の免疫バランスが崩れて様々な症状を引き起こし最終的にはショック状態に陥る可能性がある病気

アルトについてはこういうことです。

  1. (おそらくは)先天的な異常により、副腎をうまく形成できない、あるいは形成した副腎を破壊してしまう(自己免疫不全など)
  2. 副腎が形成されない(あるいは非常に小さい)ため、そこから分泌するべきホルモンが体内で絶対的に不足する
  3. ホルモン異常により体内の免疫バランスが崩れ、免疫不全による炎症・食欲不振などが起きる
  4. 結果、水さえも飲まなくなり、脱水症状にまで至った

実はこれまでも何度か、下痢をしたり嘔吐したりといったことがありました。その度に病院に行って検査しましたが、だいたいにおいて胃腸炎などと診断され、対症療法を行ってきました。推測であることも含め主治医と一致した見解になりますが、おそらく子供の頃からアジソン病を患っていて、慢性的にこれらの症状が起きては治ってのサイクルだったのだと思われます。今回はそれが顕著な形で発現したため、ようやく根本の病気に気がついたと。アルトに関していえば、根本が臓器形成不全と思われますので、もう少し早くわかっていたとしても、結果は変わらなかったかと思います。

ちなみに、アジソン病の発症率は0.036%。1万頭に3、4頭の計算ですから、かなりレアな病気だといえます。そのうちでも3〜7歳くらいのメスが7割程度を占めるということですから、ボーダーコリーのオスであるアルトが発症したというのは、親としてなんともやりきれない思いがあります。

アジソン病の診断

このあたりは 主治医にお任せすればよいお話ですが、ホルモンの値を2回測るという手法が取られるようです。1回目(pre)、ホルモン分泌刺激薬注射1時間後に2回目(post)の血液を採取し、血液中のホルモン値を観察すると。通常であれば(副腎が正常に機能していれば)、1回目よりも2回目のほうがホルモン値が高くなり、そうでない場合はなんらかの 異常があるということになります。

アジソン病の治療

さて、ここまででアルトには生命を維持していく上で必要なホルモンを体内で生成する器官が機能していないということがわかりました。そして完治、つまりは副腎が再生して機能を維持し続けることができるようになることもないと(感染症などで一時的に副腎の機能が失われているようなケースでは、その原因となる病気が治れば機能の回復が見込めますが)。

副次的な作用あるいは隠れた病因が顕在化する可能性は否めず、今後もしっかりと検査を続けなければいけないものの、アジソン病そのものは、投薬によってホルモンを補充することで、寿命を全うすることができるとのことです。アジソン病では、「フロリネフ」という薬が第一選択薬というか、アジソン病といえばこれ!というくらいなデファクトスタンダードとなっているようです。

副腎が萎縮するという根源的な問題は解決できないものの、そのかわりに本来副腎が分泌すべきホルモンを薬で補うことで生命を維持できるということですね。特にアルトの場合、投与を開始した翌日の検査でその効果が見えてきており、主治医によれば早く効果が出てくるほど、予後の状況もよいとのことで、ひとまずホッとしたところです。

これから

しばらくは通院での検査(通常の血液検査)が続きます。また、2週間後にホルモン値検査を再度実施する予定です。

あとは何よりも投薬!治らない以上、アルトが虹の橋を渡るまで、薬を食べてもらわなければなりません。もしiPS細胞か何かを使って副腎を再生して、かつそれを破壊するような自己形成不全の要因も取り除くことができれば、投薬が不要になることもあるかもしれませんが、基本的には決められた用量をこれからずっと毎日与えることになります。

一番の現実的な問題は、このフロリネフという薬、薬価が非常に高い!1錠(0.1 mg)あたり380円という超攻撃的なお値段。このあたり含め、どのようにこの病気とつきあっていくかというのが、大きな問題になりそうです。

なお、 主治医からは水を飲む量と排泄する量が増えるときいていましたが、もともと水をたくさん飲 む子だったので違いはよくわかりません。

実は、半分くらいまで書いて、アルトを連れて(家に一人にするのは少し不安だったので)近くのコンビニに買い物に行ったのですが、これが全然変わっていない。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」といいますが、この子はいつだってそうです。パピーの頃からちょっと体調を崩しても、数日後にはケロっとして何事もなかったかのように明るく人なつっこい性格をあたりに振りまいてくれます。主治医の 言うこともあって、ひとまず安心しています。退院直後からもうこの笑顔ですから。

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おわりに

このブログを始めるきっかけになったのは、いうまでもなく愛犬のアルトが聞きなれない、かつ不治の病いである「アジソン病」に罹患したと診断されたからです。ただし、病態にもよりますが、アジソン病は放置すれば死に至る可能性が高いものの、適切な投薬管理により寿命を全うできる可能性が高い病気です。この記事を読んでくださった方で、同じ境遇の方との情報交換、あるいは同様の傾向が見られる場合にある種のヒントとなれば、またこれからずっとアルトと暮らしていく上での現実的な実際例が記録として提示できればと考えています。今後は検査の結果やアルトとの日常を気まぐれに綴っていく予定です。

薬がきちんと効いて、結果として他の病気のない子と同じになり、これもまた結果としてただのボーダーコリーと一緒に住んでいる人のブログになることを祈りつつ。